「何の役にも立たない」ニュートリノ研究の凄さとは?
サイエンス作家・竹内薫のノーベル賞プレイバック講義【第二回】
ニュートリノが「振動」するとは?
ひとことで言えば「振動」=「種類が変わる」ということです。ここで単純化するためにミューニュートリノとタウニュートリノの2種類で考えてみると、粒子が進んでいく過程で最初はミューニュートリノだったものが、タウニュートリノになり、そしてまたミューニュートリノに戻るということです。
そもそも3種類のニュートリノが「変身する」っていうのは変な話なんですよ。素粒子は本来性質が決まっているものですから。これを人間に例えてみると、太郎くんが道を歩いていたら途中で花子さんに変わってまた最後、太郎くんに変わるっておかしいでしょう(笑)。でもそれが素粒子レベルでは起きているんです。
もうひとつ「振動」について視点を変えて説明してみましょう。「音のうなり」って分かりますか? ともに波長が違うブウ~ンという音と、ブウ~ンという音同士を重ねるとフォワ~ン、フォワ~ンと「うなり」が生じるんです。それが聞こえない時と、うなりが生じた時との関係がニュートリノの種類が変わったということに相当するんです。
梶田先生が最初ニュートリノ振動の研究を発表された時、みんな「そんなものあるものか」と思っていました。でもそれをスーパーカミオカンデ(岐阜県の旧神岡鉱山内にある観測装置)という、カミオカンデがアップグレードされた装置で実証したんです。